はしっこ

彼女はきっと泣いていたのだろう。

あてもなく、ふらふらと門前仲町の街を歩く。

立ち並ぶ店はどれも趣深い。

しかしどこも準備中。

門前仲町界隈には築地で働いている人間が多い。

私も築地で働いている。

昼過ぎに終わる築地の仕事柄、重宝されるのは

“明るいうちから開いている店”

24時間オープンの磯丸水産

暇を持て余すネパール料理屋

虎(フウ)なんていう老舗中華料理屋もある。

そんな昼飲み激戦区に殴り込みをかけたのが

“大衆酒場845”である。

25年にわたり大手居酒屋チェーン等で経験を積んだ橋野和弘氏による独立店舗だ。

同店は、プロダクトオブタイム(東京品川区 代表取締役:千倫義氏)がプロデュースを手掛ける。

同社の大ヒット業態“大衆酒場ビートル”をベースにしながら、門前仲町に根付く店を目指し奮闘している。らしい。

一切興味がないから入店。

なんちゅう店構え。

好きだ。愛してる。

酒と飯。

男と女。

どう付き合うか。

人類永遠のテーマである。

乾杯

男は黙って黒ラベル

そんな時代は終わった。

禁酒宣言初日

プレミアムモルツに媚び売ってのうのうと生き延びる飲食店にはなりたくない。

そんなプライドを感じさせる至って普通の一杯だ。

あてもなく歩いた末に辿り着いたあての数々

酒と飯。

酒に諦めはついた。

飯だ飯。

「オススメは?」

なんて気持ち悪い質問をしてみる。

「肉豆腐です。」

「他には?」

「おでんです。」
「寒くなってきたんで。」

ええやん。

大衆酒場やん。

と、思わず関西弁が飛び出そうなくらい普通の肉豆腐とおでんが出てきた。

ビールで流し込む。

ビール空いてもうたやないかい。

もう、やめたい。

涙にあふれたチンチロリン

”サヨナラ”の代わりにチンチロリンハイボールを注文。

2個のサイコロを振って出た目の数で価格とサイズが決まる。

ゾロ目は無料

偶数は半額

奇数はメガサイズ(倍額)

不要なシステムだ。

奇数

メガハイボール確定

かかってこい。

メガハイボール

メガハイボール感のないメガハイボールを40秒で空けた私は涙ながらにリベンジを挑む。

四角いおっぱい

最近ご無沙汰な私に四角いおっぱいはあまりにも刺激的すぎる。

上から下から涙が出てくる。

スクエアパイオツハイボール

無料で差し出された感のないそのハイボールを40秒で空けた私は

潰れた。

〆の…

〆のレバーペーストを注文した。

右利きやで

おそらく私を左利きと勘違いしたのだろう。

スプーンは素直だ。

”サウスポーは天才”という情報は小学2年生で取り入れていた。

それ以来「左利き以外愛せない」と豪語していた。

彼女はきっと泣いていたのだろう。

最後の押印が朱く滲んだ。

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